なぜ月経周期に合わせてトレーニングするのか?

女性アスリートとしての可能性を最大限に引き出すには、自分の体について理解することが重要です。GarminとWild.AI(2022年Garmin Health Award エンゲージメント部門受賞)がサポートしてくれます。

女性アスリートとしての可能性を最大限に引き出すためには、自分の体について理解することが重要です。これには、月経周期を理解することも含まれます。

Garmin Connectの目的は、睡眠やストレス、月経周期(記録されている場合)など、あなたの健康データを確認し、理解できるようにすることです*。Garmin Connectの生理周期トラッキング機能では、月経周期の特定の期間に基づいた情報を提供しますが、Garminのデータを活用した、より豊富なトレーニングのガイダンスが必要であれば、Wild.AIの活用が適しているかもしれません。関連するGarminのヘルスデータをWild.AIに統合することで、より良いガイダンスを受けることが可能になります。

月経周期はパフォーマンスにどう影響するのか?

ホルモンは月経周期を通じて変動し、筋肉、骨、エネルギー代謝に影響を与えます。下の表は、エストロゲンとプロゲステロンが身体に与える生理学的影響を示しています。エストロゲンは一般的に月経周期の前半に多く、プロゲステロンは後半に多く分泌されます。

エストロゲン筋力の向上1脂肪の利用増加と炭水化物およびタンパク質の分解減少2持久力の向上4筋肉への神経駆動の増加2体液量の増加1抗酸化能力の向上による筋損傷からの保護2セロトニンに対する感受性を高める可能性の増加(エストロゲンの負の影響)10
プロゲステロンタンパク質の分解増加1腸透過性の低下1抗エストロゲン作用(エストロゲンの作用とは反対の作用)1

月経周期とそれに関連する症状をトラッキングすることの利点とは?

生理が出血を伴うことが多いことを考えると、月経周期のトラッキングは不要に思えるかもしれません。しかし、生理が定期的に繰り返されることは、健康であることの証です。月経周期を生理日だけに限定すると、毎月の月経周期のうち、体調に異変を感じる他の時期についての情報が失われてしまいます。また、すべての人が平均的な28日間の月経周期を経験するわけではありません。さまざまな段階にわたって症状をトラッキングすることは、個々人のパターンを理解するのに役立ちます。

月経周期のトラッキングにより、症状の発現と重症度を予測し、トレーニングプログラムの期間設定を支援します。また、ネガティブな症状を緩和し、最大限のパフォーマンスを発揮できる時期に向けての調整を助けることもできます。さらに、通常のサイクルから逸脱している場合は、何か深刻な兆候である可能性があり、かかりつけ医の診察が必要になるかもしれません。

毎月の月経周期の傾向を把握しておくことは、個々人のパターンを明らかにし、女性としてのトレーニングメニューやカロリー補給、回復の方法をよりよく理解するのに役立ちます。Wild.AIで利用可能な持久力トレーニングプランは、個々人の生理周期のフェーズに自動的に適応されます。また、トレーニング前後の栄養補給と回復について、月経周期に基づいたアドバイスを受けることもできます。さらに、一般的な生理の症状を軽減する方法も提案されます。

ホルモンレベルに合わせて運動や食事をすべきなのでしょうか?

トラッキングを通じて、月経周期に関連する個々の症状を知ることは、運動やカロリー補給を月経周期にどのように適応する必要があるかを理解することに役立ちます。そうすることで、自分の月経周期に何が起こっているかを把握し、その時期やその日の体調に合わせて、運動やカロリー補給を調整することができるようになります。つまり、女性ホルモンが女性の生理と代謝に与える影響についての私たちの知見を利用すれば、実際に必要な調整をサポートすることができるのです。

Wild.AIを通じて月経周期をトラッキングすることで、あなたの生理状態とパフォーマンスの準備状況についての日々の洞察を得ることができます。以下より示す概要では、生理状態についてのより詳細な情報を提供します:

卵胞前期(別名:生理): 月経周期は卵胞前期から「始まります」。この時期、子宮壁は内膜を剥がし始めます。この時期は、一般的には生理と呼ばれています。

生理前に始まる炎症反応は、生理が始まる卵胞前期まで続きます。この時期には、子宮付近の血管が収縮し、子宮筋が収縮するため、しばしば痙攣が起こります5。生理周期のトレーニングプログラムは、個々人に合わせて作成する必要がありますが、この時期に運動することで、症状が緩和されることが報告されています6。この時期にはホルモンのレベルが低下するため、炭水化物への依存度が高くなり、無酸素運動やスプリントなどの強度の高い運動でパフォーマンスが向上する可能性が高まります7

中期卵胞期: 卵胞期は卵胞を発育させ、子宮内膜を厚くすることに集中します11

この時期には、エストロゲンのレベルが上昇します。エストロゲンは、筋収縮に伴う炭水化物感受性の亢進を促し、高強度の有酸素運動をサポートする可能性があります4。エストロゲンによって神経駆動(つまり、筋肉を活性化する脳の能力)が高まり、筋力も高まる可能性があることから、卵胞期は筋力トレーニングに集中するのに適した時期であると考えられます8,9。この時期は回復力が高まることが報告されており、思いリフティングセッションなどには良いかもしれません9

排卵期: 排卵は月経周期の中間頃に起こります。排卵期には、成熟した卵子が放出され、卵管を通過します。排卵は、極めて高レベルのエストロゲン11によって促進される黄体形成ホルモン(LH)によって急上昇から起こります。

排卵は、結局のところ、エストロゲンのレベルが継続的に上昇することによって刺激されます。エストロゲンには同化作用があるため、この時期は筋力トレーニングに集中するのに良い時期といえます1

黄体中期: 黄体中期は、受精卵が子宮に着床するための準備を行う時期です。この時期、プロゲステロンは黄体と子宮内膜の準備を助けます11

黄体中期には、プロゲステロンがピークに達し、エストロゲンが再び上昇し始めます。エストロゲンは脂肪代謝を促し、プロゲステロンによる炭水化物の代謝低下と相まって、トレーニング前後には炭水化物の摂取量を多くする必要があるかもしれません。このことは、黄体期がより長時間の持久的活動に適していることを示唆しています4。しかし、エストロゲンもプロゲステロンも肝臓でのグルコース産生を抑制するため、より長時間の持久的活動(90分を超える)を行う場合には糖質補給が必要となります4

また、黄体期には、プロゲステロンがトレーニング後のタンパク質の分解を促すため、この時期にはタンパク質を摂取するタイミングと摂取量に注意を払うとより効果的であると示唆されています

黄体後期: 受精卵が子宮内膜に着床しない場合、黄体は退縮し、エストロゲンとプロゲステロンは卵胞前期レベルまで後退します。それにより、身体は子宮内膜を剥がす準備をします。

月経前、または黄体後期には、一般的にPMS(月経前症候群)と呼ばれる様々な症状を伴うことがよくあります。この時期には、生理に備えて炎症が増加します。激しい運動と相まって、この時期には、疲労や痛みに関連した様々な症状に対処するための食事や微量栄養素の調整が必要になることがあります1

更年期と閉経:更年期にはエストロゲンが変動し、その結果、閉経期には低レベルになります。したがって、この時期の運動には、骨密度の低下を最小限に抑えるために、何らかの負荷(レジスタンストレーニングなど)をかけることが強く推奨されています。背骨は骨粗鬆症やその後の骨折に最も影響を受けやすい部位であるため、スクワットのように背骨に負荷をかける運動は最も重要です。そのような運動と高タンパク質の摂取を組み合わせることで、体組成の望ましくない変化や骨量減少に対処することができます。

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*データの精度に関する情報はこちらをご覧ください

1. Bruinvels, Georgie, et al. “Menstrual Cycle: The Importance of Both the Phases and the Transitions Between Phases on Training and Performance.” Sports Medicine, vol. 52, no. 7, July 2022, pp. 1457–60, https://doi.org/10.1007/s40279-022-01691-2.

2.  McNulty, Kelly Lee, et al. “The Effects of Menstrual Cycle Phase on Exercise Performance in Eumenorrheic Women: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Sports Medicine, vol. 50, no. 10, Oct. 2020, pp. 1813–27, https://doi.org/10.1007/s40279-020-01319-3.

3. Helm, Macy M., et al. “Impact of Nutrition-Based Interventions on Athletic Performance during Menstrual Cycle Phases: A Review.” International Journal of Environmental Research and Public Health, vol. 18, no. 12, June 2021, p. 6294, https://doi.org/10.3390/ijerph18126294.

4. Oosthuyse, Tanja, and Andrew N. Bosch. “The Effect of the Menstrual Cycle on Exercise Metabolism: Implications for Exercise Performance in Eumenorrhoeic Women.” Sports Medicine, vol. 40, no. 3, 2010, pp. 207–27, https://doi.org/10.2165/11317090-000000000-00000.

5. Alvin, P. E., & Litt, I. F. (1982). Current status of the etiology and management of dysmenorrhea in adolescence. Pediatrics, 70(4), 516-525.

6. Ortiz, Mario I., et al. “Effect of a Physiotherapy Program in Women with Primary Dysmenorrhea.” European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology, vol. 194, 2015, pp. 24–29, https://doi.org/10.1016/j.ejogrb.2015.08.008.

7. Hackney, Anthony C. “Menstrual Cycle Hormonal Changes and Energy Substrate Metabolism in Exercising Women: A Perspective.” International Journal of Environmental Research and Public Health, vol. 18, no. 19, Sept. 2021, p. 10024, https://doi.org/10.3390/ijerph181910024.

8. Wikström-Frisén, Lisbeth, et al. “Effects on Power, Strength and Lean Body Mass of Menstrual/Oral Contraceptive Cycle Based Resistance Training.” The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness, vol. 57, no. 1–2, 2017, https://doi.org/10.23736/S0022-4707.16.05848-5.

9. Minahan, Clare, et al. “The Influence of Estradiol on Muscle Damage and Leg Strength after Intense Eccentric Exercise.” European Journal of Applied Physiology, vol. 115, no. 7, 2015, pp. 1493–500, https://doi.org/10.1007/s00421-015-3133-9.

10. Rybaczyk, Leszek A., et al. “An Overlooked Connection: Serotonergic Mediation of Estrogen-Related Physiology and Pathology.” BMC Women’s Health, vol. 5, no. 1, 2005, pp. 12, https://doi.org/10.1186/1472-6874-5-12.

11. Thiyagarajan, Dhanalakshmi K., et al. “Physiology, Menstrual Cycle.” StatPearls, StatPearls Publishing, 2022, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK500020/.