トレイルランナーへの筋力トレーニングガイドライン

スポーツ科学の概念の普及に伴い、様々なトレーニング本やオンラインプラットフォームからランナーの筋力トレーニングの重要性を学ぶことができます。特に、持久力選手はタンパク質を消費し、筋肉を破壊するため、その選手に対して、筋力トレーニングの正しいガイドラインは、選手たちの筋肉量を維持し、運動能力を改善し、怪我の発生を減らすことができます。トレイルランニングはさまざまな方向から筋肉や結合組織、骨などにかなり大きな負担を与えるため、この種のランナーは体や身体の歪み、バランスなどを安定させるトレーニングを必要とします。そのため、筋力トレーニングの計画的なガイドラインは、長距離走とは少し違います。この記事では、すべて説明し、参照用としていくつかのトレーニング演習を共有します。まず、理解していただきたい重要な概念と前提条件がいくつかあります。

1.本稿で述べた筋力トレーニングの内容は、トレイルランニングにおける運動能力の強化のために計画されたものです。構造的な問題 (立つときの姿勢など)や筋肉を活性化する技術 (レッドコードなど)及び、筋肉のバランスの問題については深くは論じません。しかし、これらのトレーニングが重要ではないというわけではありません。これらはとても基礎的なものです。自分たちの立つ姿勢がバランスを欠いている場合 (例えば、アッパークロス症候群など)は、体重による負荷または衝撃の激しいトレーニングと組み合わさると、脊椎の損傷につながります。リハビリや理学療法に関するこれらのトレーニング内容は、非常に重要かつ広範な知識であるため、ここではあまり紹介しません。

2.体重を支える必要性格運動強度が増すにつれ、体重を増やしながら徐々に筋力トレーニングを増やすことが、筋肉と神経のつながりや筋力ならびに骨の強度を改善する鍵となります。運動ではなく、、低強度のランニングやウォーキングを自然に体験したいランナーにとっては、フリーハンドでのトレーニングやさまざまな体格のレジスタンスバンドを使ったトレーニングも、スポーツ外傷の軽減に役立ちます。

3.筋力トレーニングは定期的に行う必要がありますか?
もちろんです。周期化は科学的トレーニングの指標であり、その目的としては目標のイベントに適応するために体を徐々に強くさせることです。家を建てるようなもので、論理と順番があります。筋力トレーニングの期間区分に関しては、いくつかの異なったトレーニング計画がそれぞれ異なるクリークにあります。私が提唱しているトレーニング方法は、解剖学的適応の段階から始めて、連動した低重量の刺激から筋力トレーニングに身体を適応させる方法です。次に、筋肥大期、最大筋力期、筋持久力期、最終的に調整して競技に備えるための専門的なトレーニングへと到達させていきます。個人的にはトレイルランニングの周期化した筋力トレーニングを計画するには、長距離走トレーニングのモデルに従えばいいと考えます。

ただ、トレイルランニングは競技の種類が違うので、筋力トレーニングの部分に重点が置かれます。例えば、バーティカルキロメートル (VK) に備えて、スレッド 引き(またはタイヤなど) からスプリント/ストライドランニング運動、スピンバイクでの負荷のかかったインターバルトレーニング、ウェイト付きの片足ジャンプ、および筋肉トレーニングのプランに組み込まれている、上り坂のランニングやロードトレーニングに沿った他の運動に重点を置くことに適しています。しかし、下り坂のレースに備えて、もっと大腿四頭筋に偏ったトレーニングが必要です。

4.前述したように、本稿では、 「典型的な」 トレイルレースの準備を例に、筋力トレーニングの計画を紹介します。では、代表的なトレイルレースとは何でしょうか?これを距離で区別しませんが、上り坂と下り坂の割合は約1:1である必要があります。代表的と呼ばれるトレイルレースは、トレイルセクションがトラック全体の85%以上を占めるものです。では、特別なトレイルレースとは何でしょうか?例えば、前述したVKレース、ダウンヒルレース、タワーランニング、砂漠トレイルランニングは区別すべき異なったトレーニングモデルです。

いくつかの疑問を明らかにするのに役立つことに加えて、上記の5つのポイントは、特に周期性と機能性の概念が以下の焦点になるので、実際には「計画ガイドライン」の内容の基礎が築かれています。

トレイルランナーの筋力トレーニング計画のガイドライン (期間区分したもの)

1.解剖学的な適応段階

筋力トレーニングの経験がないランナーや、トレーニングをしばらく中断しているアスリートにとって、筋力トレーニングの期間に入る最初の段階です。低い負荷や高い安定性および高い連動系のトレーニングから始めることにより、この段階では身体が筋力トレーニングのエクササイズモードに適応して筋肉量が増加し、小さい筋肉群および深部の筋肉群を活性化されます。この段階では、これから行われる強度の高い大規模なトレーニングに備えた長距離走の準備期間のようなものです。筋力トレーニングの基礎がない場合は、この適応期を4~6週間に行うことをお勧めします。筋力トレーニングは、筋肉への刺激に加えて、結合組織 (腱、靱帯、骨細胞など) の適応にも役立ちますが、時間がかかります。そのため、初心者の方には週2~3回、6週間のトレーニングをお勧めします。すでに週に1回、定期的にウェイトトレーニングを行っている場合は、この解剖学的適応の段階をスキップしても構いません。このフェーズに適したトレーニングは次のとおりです:

(1) 片足立ち (目を開いた状態で/目を閉じた状態で)

これは下肢の基本的なトレーニングに適しています。特に足首に慢性的な病気がある人は、片足で立つことで平行感覚の安定が改善され、足の裏からふくらはぎまでの多くの小さな筋肉群の安定性が高まります。

(2) 片足スクワット

なぜ片足トレーニングをするのでしょうか?主な理由は2つあります。1つ目に、ランニングは片足の回転で身体を支えるスポーツであるためです。2つ目に、脚をそれぞれトレーニングすることは、両足の筋力のバランスをとるのに役立ちます。片足スクワットのエクササイズモードはランニングに似ています。片方の足は支えていて、もう片方は後ろにある状態です。このトレーニングには多くのバリエーションがあります。レジスタンスバンドを追加することで、上肢のトレーニングも同時に行えます。これによって、コーディネーション能力や全身の筋力の向上にさらに役立ちます。

基本バージョン:

レジスタンスバンドを追加

アドバンスバージョン (持久力の段階、基礎トレーニングを受けたあとでのみ実行します)

(3) ヨガのブリッジポーズ

一般的には、胸筋、腹筋、大腿四頭筋など、自分が確認することができる体の部分のトレーニングに慣れています。背中やハムストリングなどの筋肉群など、確認できない部分のトレーニングは怠ることが多く、筋力の不均衡や構造上の問題を引き起こすことがあります。ブリッジトレーニングは、走るときに重心(股関節)を前に動かし、後ろに倒れないようにするのに役立ちます。レッグリフトや不安定な器具などの要素があれば、強度を上げることができ、トレイルランニングに求められるものに近いトレーニングができます。

このビデオでは、さまざまなバリエーションのブリッジトレーニングを紹介しています。これはランナーにとって良いトレーニングです。

(4) レジスタンスバンド-レッグカール

前のセクションでは、一般の人のハムストリングの筋力は、特別なトレーニングをしていない大腿四頭筋の筋力よりもずっと弱いことを述べていました。レジスタンスバンドを使ってハムストリングの収縮をトレーニングするのは、非常に便利で良い方法です。このトレーニングは簡単なように思います。背筋の収縮力が不十分だと、トレーニング中に膝が補正して胴体に向かって動きやすくしてくれます。このトレーニングでは、膝の位置をできるだけ固定して、ハムストリングで鍛えたい部分を刺激します。

 (5) レジスタンスバンド–身体のブレを無くすコアトレーニング

ランナーのコアトレーニングは、身体のブレを無くしたりとランニング時のコアの安定化 (ここでは呼吸のトレーニングについては触れません) に重点を置いています。不安定な環境で走るトレイルランナーは常にバランスをとる必要があるため、コアの筋力が非常に重要です。以下のビデオリンクでは、身体のブレを無くす筋力トレーニングについて説明します。45度の角度など、さまざまな方向にストレッチすることもできます。これにより、トレイルランニングのシチュエーションに合わせてストレッチを行うことができます。

2.トレイルランニング専門のトレーニング (ウェイトの増加)

まずはじめに、体重の増加は体への負荷や圧力が即時に増加してしまうことに注意して下さい。この記事はあなた専用のガイドラインです。トレーニングの方法がわからない場合は、プロのコーチを必ず探して正確な指導と計画に役立ててください。

解剖学的適応の段階での基礎訓練の後、体重を増加させる方向へのトレーニングを始めることができる。最初に、いくつかのトレーニングの最大能力 (1 RM) を測定する必要があります。

1 RMテストはウェイトトレーニングの第一歩です。これはとても重要なものです。1 RMのデータがなければ、その後の体重とトレーニング量の計画を立てることができません。トレイルおよび長距離ランナーの筋力トレーニングで最も重要なのは、筋線維(速筋)を補充する神経の能力を改善することで、2番目は筋肥大です。トレーニングのロジックから、主に最大筋力(85%超)のトレーニングに基づいており、セット間に2~3分の休憩を設けて、各トレーニングの質を確保します。

最大筋力のフェーズ前に、2~3週間の「筋肥大のフェーズ」 (例:15 RM、10回、4~6セット)に入って、ウェイトの負荷を増加させます。解剖学的適応フェーズ後のウェイトトレーニングの負荷に身体を適応させます。この段階では、固定装置でのトレーニングは補助的になると思います。このようなトレーニングでは、体の特定の部分の筋力を強化するのに役立ち、いくつかの関節の角度の固定を必要とします。それにより、全身をトレーニングする方法はなく、他のスポーツへ適応する能力がない場合は、補助トレーニング(スポーツ選手が怪我をした時のクロストレーニングなど)としてのみお勧めします。 筋肥大期と最大筋力期については、トレイルランナーに適したトレーニングとして、次のトレーニングをお勧めします:

(1) ケトルベルトを使った片足スクワット

重いウェイトを扱うバックスクワットに言及しない理由は、バックスクワットはトレーニングを受けた人の動きと動作に関して多くのポイントを必要とするからです。誤った扱いをすると、スポーツ外傷 (特に腰)を起こしやすくなります。このような高度な技術的な動きは、ジムのコーチに任せてください。
バックスクワットと比較して、片足スクワットの方が脊椎にかかる圧力がはるかに少なく、この動きはランナーの動きのパターン (片脚で支えるという動き)の方に対応します。

(2) ルーマニアニアン・デッドリフト (RDL) および片足RDL

片脚RDLは、片足で立ち、胴体に前かがみになって、負荷を徐々にかけることにより、てこの作用と圧力が発生します。それによって、足首および膝から頸椎までの運動連鎖全体が負荷への耐性ができます。このトレーニングによって、運動連鎖や股関節、臀部およびハムストリングスの強化、平行感覚の改善に非常に役立ちます。不安定な環境で走っているときに、足首から胴体までしっかりと安定させることができます。このトレーニングはトレイルランナーには欠かせません。

上級バージョン(ハムストリングスにウェイトを載せた):

(3) デッドリフト

デッドリフトは背中上部、お尻やハムストリングから足首までの体の裏側全体の運動連鎖を強化するための優れたトレーニングであることは認知されています!コネチカット大学の理学療法学科(修士号)出身の有名なアメリカ人フィットネスコーチ、ジェフ・キャバリエール氏は、デッドリフトの本質を詳しく紹介しました。重りが入っていないバーまたはポンドのウェイトを低くして開始することができます:

(4) ベンチプレス

トレイルランナーが上肢を鍛えるのはとても合理的です。自然界では、木やロープは私たちが前進したり、速度をコントロールしてくれる良いパートナーですが、もし上肢をトレーニングしていない場合は、木やロープ以外により良く走るのに役立てる方法はありません。ベンチプレスは、胸から手首にかけての力が強くなるだけでなく、呼吸法にも役立ちます。以下はジェフ・カバリエール氏によるビデオです:

(5) ファーマーズウォーク

前述したトレーニング内容は、その場でのトレーニングによって重量への耐性をつけることができます。ファーマーズウォークは、筋肉、関節および結合組織が、筋持久力期に入る前に地面から反発する衝撃に適応できる素晴らしいトレーニングです。ファーマーズウォークは、肩関節の安定性と筋力、握力、背中および股関節と下肢に非常に効果的で、スポーツ外傷を引き起こす可能性が低いです。

(6) バーベルランジ

ランジはランナーの基本的なフリーハンドの筋力トレーニングの定番です。この2足交互に負荷をかけるトレーニングは、臀部と大腿四頭筋を効果的に刺激することができ、股関節の可動域を大いに広げます。ランジで注目する点は胴体の部分です。体を動かすときは、前傾や後傾ではなく、体幹をまっすぐに保つようにします。股関節をM字に動かすイメージで行うことが必要です。バーベルを追加した後、足を下ろしたときの前脚への負荷は、加速によって指数関数的に増加します。そのため、このトレーニングの最初にウェイトを追加するときは注意が必要です。スポーツ外傷を避けるためには、膝が安定していて足の指の内側を通らず、胴体も安定していなければなりません。参考用に次のビデオをご覧ください:

さらに、動画の横にある関連リンクから、後ろ、右、左など異なる方向からのランジを見ることができます。これらの異なった4つの方向でトレーニングを行うことができます。それぞれのトレーニング機能がすべて異なっているため、すべてランナーにとって非常に便利です!


3.
筋持久力フェーズ

筋力トレーニングは、コーディネーション能力や最大パワー出力、および筋肉と神経の制御を伴う包括的な高強度トレーニングの一種です。では、なぜランナーは筋力トレーニングをする必要があるのでしょうか?ジャックダニエルズ氏のランニング強度表によると、筋力トレーニングのコード名はR強度で、60 m以内のフルスプリントのことを表します。その目的はランニングエコノミー(効率) の改善です。筋力トレーニングの負荷を増やすことで、トレイルランニングのエクササイズモードにマッスルメモリーを近づけることができます。運動神経を刺激してより多くの筋線維を動員することで、山や森の中での動きのコーディネーション能力を高めることができます。

1.エンハンスドトレーニング

これはフリーハンドでの全身または短く (1回の運動にかける時間は通常、20秒以内) 急速な筋肉収縮トレーニングです。トレーニングスケジュールの中に機能的に関連する一連のトレーニングで、インターバル走のように行います。トレーニングをすることで全身の筋力と筋持久力を強化します。以下は、トレイルランナーのトレーニング内容とよく似た、サッカー選手の強化したトレーニングスケジュールです。しかし、ここで強調したいのは、最後に筋力トレーニングを説明する理由は、筋力トレーニングは筋肉や関節に大きな影響を与えるということです。動作をうまくこなせなかったり、疲れ他状態で無理にトレーニングを続けると、けがをしやすくなります。

2.タイヤ引き

トレーニング経験のない通行人でも、ドラマでトラックのタイヤを引きずって走っているシーンを見たことがあるかもしれません!タイヤ引きという概念はここから派生したものです。特別に設計された 「タイヤ」 の上にプレートを置くことができるので、毎回トレーニングの強度をうまく定量化することができます。ドローストリング(重心)を腰に巻きつけて、短距離走やストライドを大きく使ったトレーニングを行います。この方法は、筋持久力を高めるだけでなく、走るときの前傾姿勢の感覚を覚えるのにも役立ちます。走る感覚を向上させる素晴らしいトレーニングです!

柔軟で変更可能なトレーニングの原則

結局のところ、トレーニングのスケジュールは、私たちが達成したい目標と現在の状況に左右されます。漢方に伝わる、「観察による診断、聴診・嗅覚による診断、問診による診断、脈拍感覚・触診による診断」のように、医師が最適な治療をしてくれます。選手の状態を観察して記録し、スケジュールを柔軟に調整することはコーチの非常に重要な仕事です。これは固定された期間区分の堅牢さを乗り越えるよりも重要な原則です。そのため、上記のトレーニングはすべて、異なるサイクルでも交互に行うことができますが、唯一の違いは、体重、反復、およびスピードの変動です。

この記事の最後に~

実際、多くのことを説明した後、私が皆さんに伝えたい最も重要なことは、筋力トレーニングは、一部の人が想像するように、ダンベルを持ち上げて筋肉をつけるほど、簡単ではないということです。それは非常に深く、すべての生理学的または心理学的な面で大きなブレイクスルーを達成するのに役立つ技術です。記事や動画を見るだけで学べるものではありません。走るように、それを学ぶためには、継続的な練習と積み重ねが必要です。この記事を読んで、トレイルランニングの筋力トレーニングの計画について理解が深まり、トレーニングを実践することで、山や森の中をより安全に走りやすくなることを願っています。